私は他家に嫁いでいて、将来は主人の実家の代々のお墓に入ることになります。しかし、私自身の実家にも先祖代々のお墓があるのですが、兄が急逝し子供もいないため、私以外そのお墓を守ってくれる人がいなくなってしまいました。今のところお盆やお彼岸前にお墓参り、掃除をしています。でも、今後のことが心配です。私もいずれ年をとってお墓参りできなくなったとき、お墓はどうなってしまうのでしょう?
継承者がいない実家の代々墓をどうすれば良いか
他家へ嫁がれた娘さんは、嫁ぎ先の家墓にご主人と一緒に入るのが今までは普通であったと思われますが、娘さんご自身は実のご両親・祖父母が眠るお墓の面倒もみたい(面倒をみなければならない)といった場合には、娘さん自身はどのような方法で供養を継続するか?
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供養塔へ改葬し、墓じまい
Aさん(女性) | 私は他家に嫁いでいて、将来は主人の実家の代々のお墓に入ることになります。しかし、私の実家にも先祖代々のお墓があるのですが、兄が急逝し子供もいないため、私以外そのお墓を守ってくれる人がいなくなってしまいました。今のところお盆やお彼岸前にお墓参り、掃除をしています。でも、今後のことが心配です。私もいずれ年をとってお墓参りできなくなったとき、お墓はどうなってしまうのでしょう? |
B石材店 | そのお墓はどちらにありますか?お寺の墓地ですか? |
Aさん | ええ。○○市内にある△△寺の境内の中にあります。 |
B石材店 | そうですか。 |
Aさん | 最近、ちょっとその件で、お寺のご住職に相談してみたら、お寺の中に供養塔ができたようで、いずれ墓を閉じて供養塔へ納骨したらどうかと・・・ |
かかる費用はどのくらい?
B石材店 | 供養塔にご遺骨を改葬するとなると、今あるお墓を解体処分することになります。 |
Aさん | うーん。そこまではまだ考えられないのですが・・・壊すとなったら費用もかかりますよね? |
B石材店 | はい。お墓の大きさにもよりますが、業者へ支払う費用だけでも15万円~30万円は最低かかるかもしれません。 |
Aさん | けっこうかかりますね。それ以外にはどんな費用がかかりますか? |
B石材店 | 改葬するにあたり、その菩提寺のご住職に墓前でお経をあげて頂きます。魂抜き(たましいぬき)といいますが、そのお布施がまず必要です。そして、ご遺骨を供養塔に改葬されるのであれば、さらに納骨料・供養料としてお布施をすることになります |
Aさん | いくらくらいでしょうか? |
B石材店 | 「お布施」はあくまで気持ちなので、いくらと決まっていないのですが、世の中には金額を明らかにしている供養塔もあります。供養塔内の棚に骨壺のまま20年~30年保管するタイプのもので、お一人当たり総額で20万円~50万円程度は最低かかると思います。保管しないタイプなら安いもので5万円~など・・・ |
Aさん | そうですか・・・。私の実家の場合は、骨壺に入っているもので、わかるだけでも父・母・兄の3人がいます。あと、墓誌をみると祖父母や曾祖父や早世した子供などもいるようです。全部供養するとなると結構な費用になってしまうのでしょうか? |
B石材店 | どの程度さかのぼって供養するかということですが、目安はありますが、特に決まりはございません。菩提寺にご相談されることが大事かと思いますが、ご自身のお気持ちも大切かと思います。お寺によっては、没後50年以上経過しているような仏様については、成仏されたということで、供養塔の費用計算をするにあたり、その人数にカウントしないで供養していただける場合もあるかと思います |
無縁墓
Aさん | そうですか、確かにさかのぼり始めればきりがないですものね・・・。でもやっぱりせっかく先祖が建立したお墓を壊してしまって本当に大丈夫なのかと心配です。 |
B石材店 | そう思われるのでしたら、そのままにしておいてもよいかと。 |
Aさん | でも私がいなくなれば、無縁墓になってしまいます。 |
B石材店 | 確かに無縁墓になってしまうのですが、全く縁のないお墓になってしまうかといえばそうではありません。なぜなら、奥様のご実家のお墓はお寺の境内の中にあり、いざとなれば、墓地管理者、つまりこの墓地を貸与しているお寺が供養を継続してくれるからです。そしてご住職が、このお宅の故人はすべて成仏したのでこれ以上この無縁墓を供養する必要がないと考える時期、しかるべき時期にその責任において魂抜きをし、墓石を解体処分し、もし万一ご遺骨が土に還らず残っていたら別の場所(供養塔)へ改葬してくださると思います。 |
お寺が供養塔へ改葬してくれる?
Aさん | ということは、ぶっちゃけ私自身があえて供養塔へ改葬しなくてもお寺でやってくれるから大丈夫・・・ |
B石材店 | そういうことになります。しかし、そういうこと声高を言うと、モラルハザードといいますか、お墓を無責任に放り出して良いのか、お寺に迷惑でないか、といった議論がでてくるでしょう。墓地(地面)はお寺のものですが、墓地の上に建立された墓石は使用者のものなのだから、自分のものはきちんと最後まで管理するのが大原則だからです。 とはいえ、様々な事情で無縁墓が生じていることも事実で、実際に無縁墓がお寺の費用において解体処理されている事例は普通にあります。もちろん自由に解体処理ができるわけではなく、法律手続きに従い無縁墓にあたるか確認の上、執り行われています。 |
Aさん | でも、そういうケースが増えるとお寺さんは大変ですね? |
B石材店 | 確かに大変だと思われますが、立地条件がよいお寺の場合、墓地を希望する方からの問い合わせもあるようなので、墓地を更地にしたあと、その希望者の方に再貸付することもできます。 |
Aさん | そうなのですか。では私が事故とかで突然この世からいなくなってもお寺が何とかしてくれるかもしれないということですね。お墓が粗末に扱われることはない・・・ |
B石材店 | これは墓地管理者のモラルにもかかわるところですが、お寺の墓地であれば、お墓が粗末に扱われることはないと思っていただいて結構だと思います。 |
Aさん | とりあえず安心しましたが、でもやっぱり自分の実家のお墓を無責任に放り出すことなく、何とか私が責任をもってやらないと・・・両親・ご先祖が浮かばれないような気がします・・・。 |
B石材店 | そのあたりは、よく考えていただいて無理のない範囲で供養されてはいかがでしょうか。もし、費用面でお悩みでしたら、自分自身の生活を苦しくしてまでして供養されることをご先祖様は求めてはいないと思います。 |
Aさん | 確かにそれはそうかもしれませんが・・・。でも他に方法はあるのですか? |
別々の苗字であっても同じお墓に入れる?
B石材店 | 最近は、苗字が別々であっても同じお墓に入ることも珍しくはなくなってきましたので、例えば、ご主人と相談されて、ご主人側のお墓と一緒にする、またはその隣にお墓を改葬するという方法もあるかと思います。 |
Aさん | 苗字が違うのに本当に大丈夫なのですか? |
B石材店 | もし、ご主人の代々墓の石塔に「○○家之墓」と刻まれているようでしたら、確かに苗字が違いますので一緒の納骨堂に入るのは難しいです。別の墓石を用意するなどの対応が必要です。 |
Aさん | 宗派の問題ともありますか? |
B石材店 | それもございます。ご主人の菩提寺と奥様のご実家の菩提寺は別でしょうから。でも二つの菩提寺とお付き合いするのは実際問題としては難しいですので、いずれにしてもどちらかを選ばざるを得なくなりますから・・・ |
Aさん | 実は、主人の実家のお墓は、お寺の中にあるのではなく、地元の共同墓地といったようなところにあります。遠い親戚同士というか、ご近所同士が集まった墓地の中の一画なのです。幸い墓地も広いので、もし主人の親戚も良いと言ってくだされば、その中の空いたスペースに引っ越すこともできそうです・・・ |
B石材店 | もし、ご主人やそのご実家、ご親戚とご相談してみて、ご理解が得られるようであれば、もしかしたら、それが一番良い選択肢かもしれません。二か所に分かれていた墓地が一つにまとまりますので、奥様の負担も軽減されますし、奥様のご実家の墓石も残り、手厚く愛着をもってご先祖様を供養できるかと思います。 |
Aさん | 費用の面ではどうでしょう?永代供養塔と比べて…。 |
B石材店 | 魂抜き、魂入れのお布施代、墓石の解体移転費用が必要になります。永代供養塔と一緒か、少し割高かもしれませんが、先祖代々之墓が残るメリットはあると思います。 |
石材店は供養塔に否定的?
Aさん | やっぱり石材店の方なので、お話を伺っていると、供養塔に否定的な感じがします。みんな供養塔に入ってしまえばお墓が建たなくなりますものね(笑) |
B石材店 | すみません(笑)。でも一応理由がありまして・・・。非常におおざっぱな説明ですが、日本の宗教史をひもとくと、神道系と仏教系の大きな流れがあります。 |
Aさん | はい・・・??。 |
B石材店 | 神道系は氏族のつながり(地縁・血縁)を大事にしますが、仏教は普遍宗教ということもあり教義は洗練されていて地縁・血縁的な考えと関係ありません。 供養塔という考え方は仏教的で、特に現代の供養塔は、塔の趣旨に賛同した信者が集うという意味で、キリスト教的な契約観の流れもあるように思います。一方、ご先祖様を大切に・・・という考え方は神道的なものですが、合葬形式の供養塔では、地縁血縁が関係なく納骨されますので、その大切な信仰が抜け落ちてしまうと危惧しております。 日本人の供養・信仰のあり方において、多様な選択肢を提示する必要があると考えておりまして、供養塔の意義を否定するものではなく、その趣旨をうまく取り入れて日本人の宗教観にあったお墓を模索したいと考えております。 |
お寺との付き合い方
Aさん | うーん。難しい説明だし宗教のことはよくわかりませんが、最近はお布施が高いとかでお寺離れも進んでいるようですね。 |
B石材店 | そうですね。残念ながらそのような風潮があります。菩提寺とのお付き合いが難しいとのことで、宗教自由の公営私営の墓地、檀家にならずにすむ合葬墓を申し込まれる方が増えています。でも、故人を偲び供養するという問題は、宗教なくしては語れませんし、お墓も大切な日本の文化・信仰の現れですので、お寺とも上手にお付き合いしていただきたいと思います。 |