永代供養墓(合葬墓のこと)

子供たちにお墓のことで迷惑をかけたくないので、今あるお墓を片付けて合葬形式のお墓の申込を検討しています。知っておくべきことはありますか?

 

市町村の合葬墓(納骨堂)を検討中。普通のお墓との違いは?

子供がみんな嫁いでしまい、将来的にだれもお墓参りに来てくれなくなりそうな状況。先祖代々のお墓はあるが、残したところで子どもたちへの負担となってしまうかもしれない…。お墓を片付けて市町村の合葬墓に入ろうと悩まれているが、いったい市町村がやっている合葬墓(納骨堂)はどういったものなのか。普通のお墓とはどう違うのか。

― 目次 ―

娘ばかり三人。みんな嫁いでしまった…

Aさん(男性) うちは娘ばかり三人で、みんな嫁にでてしまったから地元の町でやっている霊園の中にある「合葬墓(がっそうはか)」にしようかと考えているんだけれど・・・?
B石材店 そうですか。そのようなお話は最近よく聞きます。
Aさん やっぱりそうですか。少子化でお墓を守っていくのは難しい時代だとテレビでやっていました。
B石材店 メディアの影響が大きいですね。少子化、お寺離れ・・。でももし可能であれば、今までのお墓の良い点に気づいていただきたいと思います。
Aさん 実は私、先祖代々のお墓はあるんです。自分の父親が建てたものだけれど、だいぶ古くなっていてね。ちょっと直さないとお参りできないかな・・・でも直すくらいなら、いっそそのお墓を閉じてしまおうかと。
B石材店 え!?。お墓があるのに合葬墓ですか?せっかくのお墓なんですから直してそこに入ったらお父さんも喜ぶのではないですか?
Aさん でも、いずれ誰もお参りしてくれなくなります・・・
B石材店 うーん??そうですか?いずれというのが何年後の話なのかわかりませんが、お墓があれば少なくとも娘さん達はお参りしてくれますし、お孫さんだって可能性はあると思いますよ。家族の絆が維持できます。
Aさん 家族の絆ね・・・。でも難しいんじゃないかな?娘達に負担をかけたくないという思いもありまして。
B石材店 私が仕事柄思うに、はっきり申し上げて現在の日本社会は家制度は崩壊過程にありますが、その割に「娘は全員嫁に出したから自分たちのお墓は誰もお参りしてくれない」などと、家制度的な発想で物事を考える人が多いのには驚きです。
嫁に出た、つまり娘さんの苗字が変わったからと言っても、実家のお墓参りはしたほうが良いと思います。苗字が違うからとか、そんなこと言っている時代ではないと思いますが。
実際、私の周りにも離婚して子連れで実家に戻ってきている女性が結構いますし、そうなると戻ってきた娘さんのためにもお墓が間違いなく必要ですよね。
苗字は違えど、同じ血筋の家族として、一緒のお墓に入ることは可能ですし、今では違和感なく、普通になってきていると思います。
Aさん 嫁に出した娘が離婚して戻ってきたら?・・・
そうならないようにしてもらいたいものだね(苦笑)
B石材店 ちょっと言いすぎました・・・すみません。

町で管理している合葬墓に

Aさん いえいえ。可能性の問題ですね。確かに先のことはわかりません。
私としては娘は娘の代で考えてもらうことにして、自分は妻と一緒に町で管理してくれる合葬墓に入ろうかと。お寺とのお付き合いを娘たちに残したくもありませんから、お寺の供養塔というわけにもいきません。
B石材店 私が思うに、全くお子さんもいらっしゃらないのであれば、致し方なく合葬墓(納骨堂)でもいいと思いますが、それは最後の手段ということで、娘さんがいるのであれば、何らかの形でも普通のお墓で検討されたほうがよいと思いますが・・・
Aさん そうですか?あなたは石屋さんだからかな?普通のお墓が良いって、そういう考えなのはよくわかりますが、人には人の事情があるのです。

合葬墓内部の構造

B石材店 私が石材店であるということはひとまず置いて、イメージにとらわれず、合葬墓というものの本当の姿をよく知っていただいたほうがよいと思います。
つまり、市町村でやっているお墓だから安心だ、とか、これからの時代のニーズに合ったもので他の人も申し込んでいるみたいだから大丈夫だ、といった安易な考えではなく、よく実態をみていただきたい。合葬墓の外観
図で説明しますね。上の図は、世間一般に多い合葬墓の外観です。
下の図は、その中の構造を示したものです。合葬墓の構造
地上部の建物部分は、中が空洞で棚がたくさん並んでいて、そこに預かった骨壺を保管できるようになっています。ロッカーみたいなものをイメージしてください。
地下部は、骨壺からご遺骨を出して、そのまま(又はサラシの袋に入れ替えて)埋葬する場所となっています。
Aさん なるほど。なんとなくわかります。中の構造はこんな感じなんですね。

遺骨は土へ還す

B石材店 世間一般には、骨壺に入ったご遺骨はいつかは土に還すべきということになっています。そうでなければ、納骨室の中は骨壺であふれてしまいます。
また、宗教的観点からみても、いつまでも土に還さずご遺骨のままでは、故人がこの世から旅立てず、仏教でいうところの「成仏(じょうぶつ)」できないということになります。
Aさん 骨壷のままでいつまでも保管しているわけにはいかない・・・
B石材店 そうです。だから、最近話題の「手元供養」とか、ご自宅のお仏壇の中に骨壺を保管する「ご自宅納骨」といった話は、従来からの宗教的価値観からすると、筋の通らない供養、埋葬方法です。不完全な供養、埋葬方法に過ぎません。
Aさん 確かに。いずれ遺骨は土に還らなければいけない・・・。
B石材店 いずれ、というよりはなるべく早めに、というのが本来のあり方のようです。特に昔は「土葬」ですから、早くしなければ腐敗します。早めに土に埋めなければいけなかったわけです。
今は「火葬」時代でありますから、土葬に比べると早めに埋葬する必要がなくなってしまった。だから骨壺で保管し続けるという発想が生まれるのです。
Aさん なるほどね・・・
B石材店 ちょっと話がそれました。私がお伝えしたいのは、ご遺骨の土への還し方です。骨壺から出す際のご遺骨の扱いが、私個人としての感情ですが、合葬墓の場合、あまりにひどいのではないかと常々感じておりまして・・・。つまり先ほどの絵のとおりであること非常に多いのです。
Aさん 絵のとおり・・・?

合葬墓の実態…

B石材店 つまり、ご遺骨の上にさらにご遺骨が重なり合う、そういうことです。
骨壺から出してご遺骨を葬る場所というのは、合葬墓の場合、縦に深い「落とし穴」みたいなものであることが非常に多い。
結果、後で納骨される立場になった場合、誰かのご遺骨の上に折り重なるわけですから、いつになったら土に還るのかわかりません。
Aさん 確かにそうかもしれませんが・・・。でもそれが普通ではないですか?
B石材店 私は個人的には勘弁したい光景です。気持ちが悪いです。だって(私は煩悩があり過ぎるのでしょうか?)、もしかしたら生前嫌いだった人の遺骨が自分の遺骨の上にのしかかってくるかもしれない。
妻でもない女性の遺骨の上に自分が覆いかぶさっているかもしれない。
仮にそんな状態だったら、死んでも死にきれないかもしれません。せめて死んだ時くらい、誰にも気兼ねせず、清々しく眠りたいものです。
Aさん ・・・(苦笑)。確かにそう考えると気持ちのいい話ではないですね。でも、実際は整然と納骨されているんじゃないですか?
B石材店 いやいや(苦笑)。ご遺骨ができるだけ沢山葬ることができるように、普通このタイプの供養塔の穴は深いです。市役所の職員の手でご遺骨一体一体を丁寧に並べていくなんていう話はありません。穴の中に落とすのです。結果、さきほどの絵の状態になります。
これで死者の尊厳は守られるのでしょうか?
私たちは本当に成仏できるのでしょうか?
Aさん 死んだら無に還るんだから、そんなこと気にしなければいいんじゃないですか?死んでしまったんだから、自分の遺骨がどうなっているかなんてわかりませんよ。
B石材店 死んだら無に還るとなぜわかるんですか?誰も知らないことです。
Aさん まぁ確かにそうですが・・・。
B石材店 死んだら無になるとか、千の風になるとか、根拠のはっきりしない話や、つまらない流行歌に惑わされてはいけません。古来、多くの日本人が信じてきた宗教は、仏教ですが、死者は無に還ったりはしません。(ここでは神道の話はしません)
次の図をご覧ください。従来型のお墓です。お墓は単に遺骨を保管する場所ではありません。
従来のお墓
地上部にある墓石は、単なる〇〇家之墓と書かれた表札ではなく、そこに仏教徒であれば「ご本尊」をお迎えして、例えば浄土宗であれば「阿弥陀如来」をお迎えする。(正面に「南無阿弥陀仏」と彫刻するのはそのためです。)そして、そのご本尊(つまり仏様)のお力を借りて極楽浄土に成仏する、つまり我々は「仏(ほとけ)」として生まれ変われる、そういう信仰なのです。
繰り返しになりますが、墓石は単なる石ではなく、あなたの家(いや、あなた個人でもよいです)が信じる宗教の神様、仏様をその墓石にお迎えすることが、一番大切です。仏様をお迎えし、そのお力に借りるために、塔(お墓)を建てるのです。
そして、その墓石の下にあなた、そしてあなたのご家族のご遺骨がきちんと埋葬されること、そして、納骨室の下は土になっていて、ご遺骨が土に還られるようになっていなければなりません。
以上が守られていれば、死者は最後は仏の力を借りることで、魂も肉体もこの世からあの世にきちんと旅立つことができるのです。これが一般的な仏教の考え方なのです。
Aさん なるほどね。とすると、もしかして市町村管理の合葬墓にご本尊様はいない・・・
B石材店 いないです。もし市町村で管理している納骨堂に仏様がいたら、憲法に定める政教分離の精神に反します。
Aさん 今度は憲法ですか・・(笑)
B石材店 はい。でも、憲法を持ち出す必要もなく、市町村管理の合葬墓に宗教的な意味は見いだせません。つまり、宗教論理的に考えると、(お寺の合葬墓と異なり)市町村管理の合葬墓では成仏できません。ご遺骨は、生活衛生上の観点から保管されるにすぎません。そして、骨壺のままで保管されているうちは、まだ良いですが、骨壺から出されたあとは・・・ひどいものです。
Aさん うーん。あなたのおっしゃりたいことはよくわかります。確かにそれは一つの見識だとは思いますが。でも、私たち夫婦にとっては、合葬墓を市町村が提供してくれることで安心して死ねる、ということもある。仏教には仏教の考え方がある、でも、自分はそこまで仏教を信じているわけでもありません。成仏する、しないとか言われても・・・。
ただ、確かに言われてみれば骨壺から出したあとの最後の自分の姿があの絵のとおりだとすると、辛いものがあります・・・。愛する妻と並んで埋葬されるわけでもない。知らない皆さんとご一緒するということか・・・。
B石材店 私は合葬墓の穴の中をのぞいたことがあります。骨壺から出された個々のご遺骨は布に包まれて、折り重なっていました。でも、布はいずれは破れる。
私が言ったことではありませんが、とある石材業界関係者で「合葬墓は遺骨の捨て場だ。」と言った人もいるくらいです 。
Aさん ちょっとその言い方はひどいですね。

死者の尊厳を配慮した埋葬

B石材店 私も、そこまでは言いたくありません。様々な事情を抱えて、合葬墓での埋葬を選択した方々を思うと、その尊厳を守るためにも、そこまでは言いたくありません。でも、実際の運用はひどいのです。
私が思うに、もっと死者の尊厳というものを配慮して埋葬してほしいと思います。例えば次の図のように、すべてのご遺骨が整然と並べられて、すべてのご遺骨が土に接して浄化されるように。
納骨室の中
Aさん そうですね。そのとおりです。
B石材店 人間と獣(けもの)の違いは何か?その一つが、古来より人間は、死者を土の中に埋めるという行為をしてきました。人間の人間たる由縁をもう一度思い出していただきたいと思います。死者の尊厳すら守れなくなったら、人間は何者なのでしょうか?
いったん埋葬されてしまえば、取り返しがつきません。時代は大きく変化してきていますが、流行に惑わされず、かけがえのない故人の尊厳が守られるよう、葬送、埋葬のあり方を考えていきたいと思います。

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